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2学期がスタートして、ジュンちゃん達の学級では、自動車工業の勉強が始まった。 お父さんにたのんで自動車のボンネットをあけてもらい、いろんな部品をノートにた く さん書いたジュンちゃん。そのうち自動車が造られた工場を知りたいというので、 お母 さんにたのんでトヨタの営業所に電話をかけてもらった。
ジュンちゃんの家の車がつくられた工場は「愛知県豊田市トヨタ一町番地」とい う 所だった。 自動車工業日本一の豊田市のことを勉強して、ジュンちゃん達はびっくり するようなことを見付けた。 ・豊田市は昔は挙母(ころも)という町だった ・豊田市は弘前市と同じくらいの面積なのに小学校の数が多い ・豊田市のある愛知県では、国民所得全国第二位になっていること(青森は46位)
「弘前にも自動車工場をつくればもっと発展するのに」 「でも、自然がこわされるんじゃないの」 「弘前は農業が中心の市でいいんだ よ」 「恐ろしい病気が出るよ」 学級のみんなからいろいろな意見が出てきた。勉強が進 むにつれて、自動車工場はそ んなに危険な公害が出るものでないことがわかってきて ちょっと安心した。 それにしても自動車工場は予想以上に大きく、二千メートルものベルトコンベヤー があ る。流れ作業が行なわれていて何分もかからないで車が一台出来上がってくる。 「自動車工場ができると働く場所があって大人の人がとても助かるのかな?」 ジュンちゃんは、そんな気がしてきた。 サトミちゃんが、 「わたしの家の近くに藤代工業団地というところがあります。あそこだったら大きな工 場でも大丈夫だと思います」 と自信を持って発表した。
自動車工場をつくれそうなところが弘前市にあるんだろうか。ジュンちゃんはお父 さん に藤代工業団地に連れていってもらうことにした。 城北大橋を渡ると、左手にものすごく広い空き地がある。工場を建てるように整備 した土 地である。一五ヘクタールというから、学校の校庭が二十個分もあるのだろうか。 教科書にのっているトヨタの自動車工場が楽々はいるくらいの広さである。岩木川沿いに 細長く続いていて二十一の区画がある。道路もつくられ、工業団地内には公園も二 つある。 大きな工場を迎える準備はもうすっかりできているように見える。 「プレスや溶接、 塗装、組立など自動車の組立ラインが一直線にできる。大きな工場をつくれ る。」 ジュンちゃんは広い空き地を見ながら夢を描いてみた。 「今は景気が悪いし、弘前市は海から遠く離れているから、大きな機械工場はこないよ」 というお父さん。お姉さんのユミちゃんは、 「これ以上車がふえると事故が起こったり、空気が汚れたりして大変よ」 という。おかあさんは、 「どっちがいいのかねぇ・・・」 と考え中。家族でも意見がわかれる「藤代工業団地」の探険だった。(1996.9.1)
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